京都市、きょうから宿泊税、古都、魅力磨きおこしやす、民泊含む全ての客対象に。

京都市は1日から、市内のホテルや旅館などの宿泊者に宿泊税を課す。東京都、大阪府に続き導入自治体は3例目。民泊を含むすべての宿泊客からの徴収は初めてで、年間約46億円の税収を見込む。金沢市も2019年4月に導入し、大阪府は19年中に対象を広げる方針。ほかにも課税を狙う自治体が相次ぐが、観光振興などへの還元策も問われる。
「1日の宿泊者さまから宿泊税を徴収することになりました」。リーガロイヤルホテル京都は9月中旬、社内説明会で新税導入に伴う細かなマニュアルの変更点を確認した。「フロント業務が少々手間取るが、手際よく対応したい」(同ホテルの長谷川茂治さん)。
先行組より強気
市も4月から9月まで計18回にわたり事業者向けに説明会を実施した。ただ、参加者は対象となる事業者の約4割にとどまり、多言語でのリーフレットやポスターを用意して、訪日外国人(インバウンド)を含めた周知に力を入れる。
京都市の宿泊税は先行自治体以上に強気の内容だ。違法民泊を含むすべての宿泊者を課税対象とし、例外は修学旅行や学校行事による宿泊のみ。東京都はホテル・旅館に絞る。大阪府は簡易宿所や特区での民泊のほか、10月から民泊新法の適用施設にも課税するが、対象外の施設を残す。
宿泊料金ごとの税率でも京都市はすべてに網をかける。東京都と大阪府は1人1泊当たり1万円未満は非課税とし、税額の上限は東京都が200円、大阪府が300円。これに対し、京都市は2万円未満に200円、2万円以上5万円未満に500円、5万円以上は千円を課税する。
17年に京都市を訪れた観光客は市によると5362万人。観光消費額は最高の1兆1268億円に達した。特に外国人宿泊客数は前年比11%増の353万人で、平均宿泊日数が初めて2泊を超えた。観光客が市内にとどまる時間が延びて波及効果を生む一方、交通インフラの混雑緩和や文化財・景観の保護強化が急務となっていた。
観光客の増加がもたらす負の側面も考慮し、市は16年から費用負担を求める方法を探った。有識者会議の議論を経て、宿泊税条例案を市議会に提案し、17年11月に可決。地方税法で必要な総務相の同意も得た。市独自の新税は「古都税」以来。同税は拝観停止など仏教会の激しい反発で短命に終わった。
オランダから訪れていたトーマス・ダ・ヨンさんは「宿泊税は知らなかった。エクストラで払うのは嫌だね」と話す。簡易宿所を営む男性は「バックパッカーには負担率が大きい」と指摘する。宿泊者が減る懸念もあるが、行政サービスの対価として課税は妥当との意見もある。「インフラを享受する宿泊者への課税は一つの選択肢」と植村哲副市長は話す。
3つの混雑緩和
年間の税収として見込む約46億円は主に市内の町家や街並みの保全、文化財の保護、外国人を含む観光客の受け入れ環境の充実など、国際観光都市としての魅力向上に充てられる。門川大作市長は「『人』『時間』『場所』の3つの混雑を緩和する」と強調し、市民生活の改善にもつなげたい考えを示す。
宿泊税は宿泊施設がいったん預かり、市に納入する。制度の公正さを期すためには、民泊など小規模な宿泊施設からの徴収が難題だ。そこで市は8月、円滑な徴収のため、楽天子会社の楽天ライフルステイ(東京・千代田)と協定を結んだ。同社は民泊や簡易宿所の予約サイトを運営しており、予約・決済の際に宿泊税を徴収できる仕組みを活用する。
市は他の仲介サイトにも代行徴収を依頼する方針だ。違法民泊の監視も絡めた全宿泊者への課税や企業による代行徴収など、独自の方式が根付けば、法定外税で「『京都型』が新しいモデルになる可能性がある」(門川市長)。
京都市は観光が活況な割に税収がさほど伸びず財源不足に苦しむ。厳しい景観規制により低層の建物が多く、古い木造家屋も残るため固定資産税の評価が低い。他の主要都市に比べ生産年齢人口の割合も少ない。厳しい財政状況の下で都市力を高めるための原資として宿泊税に期待がかかる。
金沢や福岡も導入
想定通りの税収、不透明
宿泊税導入の動きは全国で相次いでいる。金沢市は2019年4月から課税を始める。民泊を含む全宿泊者が対象の「京都型」で、全国で4例目となる。
大阪府は宿泊料金で現状は1万円以上の課税対象を7千円以上に引き下げ、19年10月にも実施する。年間税収を20億円近くに上積みし、観光客の受け入れ環境の充実につなげる。
福岡市議会は9月、宿泊税の導入を含む議員提案の市観光振興条例案を可決した。導入時期や課税額など詳細は別の条例で定める。スキーなどで外国人に人気の北海道倶知安町は19年11月にも宿泊料金の2%という定率で導入を検討する。
ただ、皮算用どおり税収を得られるかは不透明だ。大阪府では競争激化で宿泊料金が下がり、17年度の税収が想定を下回った。対象見直しは、そうした実情に合わせる狙いもある。福岡では県も導入を検討し税収争奪戦の様相も呈する。
京都大学大学院経営管理研究部の前川佳一准教授は京都型は先行自治体より公平としつつ、「京都でもホテルが過剰になる可能性があり、制度運用がうまくいくかは需要次第」と指摘する。
欧米の主要都市もホテルのランクに応じた宿泊税などを景観保護や観光PRに生かす。ローマの5つ星ホテルは税率7ユーロ(900円強)で京都市の課税上限と同水準だ。課題を越え、制度を根付かせるには税収の使途の公開などを通じ、「納税者」に理解を深めてもらう必要がある。(京都支社 赤間建哉)
【表】各自治体の宿泊税
自治体〓(導入時期) 東京都〓(2002年4月) 大阪府〓(17年1月) 京都市〓(18年10月) 金沢市〓(19年4月)
宿泊料金〓1万円未満 なし なし 200円 200円
1万円以上  1万5000円未満 100円 100円
1万5000円以上 200円 200円
2万円以上  300円 500円 500円
5万円以上   1000円
収入見込み額 約25億円 約8億円 約46億円 約7億円
○北海道倶知安町は宿泊料金の2%の定率制で19年11月に導入予定
○福岡市議会は宿泊税創設を含む市観光振興条例を9月可決(詳細未定)
※倶知安町は総務相が未承認。宿泊料金は1人1泊。収入見込み額の東京都と大阪府は18年度当初予算。その他は平年度
【図・写真】アーキエムズ(京都市)の運営するホテルではフロント近くのポスターで宿泊税の導入を告知する

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