廃プラ根絶物語(1)ごみか、宝の山か(迫真)

タイの首都バンコク近郊のプラブカヤリサイクル工場。ペットボトルやボトルキャップ、レジ袋などが入った袋がうずたかく積み上がる。その中には、日本語が印字された輸出用鶏肉加工食品の包装用プラスチックの山も。「ごみは宝の山だ」と工場長のティラウォン・サンピパット(37)は話す。
□   □
世界のプラごみは主に先進国からアジアの途上国に輸出され、リサイクルされてきた。ただごみ管理体制が貧弱なアジアでは、リサイクルの輪から漏れて海に流れ出るプラごみも多い。「世界で年480万~1270万トンのプラごみが海に流れ込んでいる」と米ジョージア大准教授、ジェナ・ジャンベックは推計する。海洋排出量トップは中国で、上位10カ国のうち8カ国がアジアだ。
今年に入り、アジア諸国がプラごみ規制に動き出した。世界最大のプラごみ輸入国だった中国が1月から輸入禁止措置をとったほか、ベトナムやタイも輸入制限や取り締まり強化を進める。環境汚染が社会問題化し、ごみ輸入への反発が強まったためだ。ジャンベックは「これまでリサイクルされていたごみが(輸入禁止で)埋め立てに回る可能性がある」と警告する。特にごみ輸出に頼っていた日米欧には打撃だ。
各国はプラごみ削減を急ぐ。「プラごみは紛れもない大問題だ」。欧州連合(EU)の欧州委員会第1副委員長、フランス・ティメルマンス(57)は5月、ストローなどの使い捨てプラスチック製品を禁止する新ルールを提案した。欧州委の会議ではペットボトル入りの水は出さないと宣言し「みなさんもお願いします」と呼びかけた。
8月、ニュージーランドの首都ウェリントンにあるライアル・ベイ。産休から復帰して約1週間の同国首相、ジャシンダ・アーダーン(38)は砂浜で子どもたちとごみを拾い「使い捨てのビニール袋を廃止する」と宣言した。米カリフォルニア州知事のジェリー・ブラウン(80)も9月20日、レストランでプラ製ストローの提供禁止を義務づける法律に署名した。
飲食業界でもストロー廃止の動きが相次ぐ。米スターバックスは7月、2020年以降のストロー廃止を打ち出した。米ホテル「ニューヨーク・マリオット・マーキース」では7月、年100万本使っていたプラ製ストローを紙製に切り替えた。1本あたり0・5セントほどのプラ製より紙製は約4倍高いが、支配人のサル・ピグニオは「希望客だけに提供することで使用本数を抑えられる」とそろばんをはじく。
□   □
ただストローは海洋プラごみの1%以下にすぎない。18歳のときに非政府組織(NGO)「オーシャン・クリーンアップ」を立ち上げたオランダのボイヤン・スラット(24)らが、米西海岸とハワイの間でプラごみが滞留する海域「太平洋ごみベルト」を調査したところ、ごみの半数は漁網だった。
衝撃だったのは、リサイクル率が高いはずの日本のごみが多かったことだ。ラベルが読み取れたごみのうち、日本製が34%と最も多かった。ごみ全体の10~20%は東日本大震災の津波で流されたものだと推定する。
太平洋ごみベルトを「5年間で半減させる」と意気込むスラットは、プラごみ回収装置を開発した。長さ600メートルのカーテン状の柵を海上に浮かべ、9月8日に米サンフランシスコを出航して試験を始めた。
プラごみが波や紫外線で粉砕されると長さ5ミリメートル以下の「マイクロプラスチック」となり、人が食べる魚に蓄積しかねない。50年には海のプラごみは魚の総重量を超えるとされ、削減は急務だ。
日本は年150万トンのプラごみを海外に輸出してきた。政府は年内にも数値目標を盛り込んだ対応策をまとめる方針だが、プラごみへの包括的な規制はない。6月の主要7カ国(G7)首脳会議で採択された「海洋プラスチック憲章」には、業界との調整がつかず署名できなかった。対策を加速する世界の潮流に取り残されれば、プラごみが行き場を失いかねない。
(敬称略)

プラスチックの量産が始まって半世紀あまり。生産量は累計83億トンだが、リサイクルされたプラごみはわずか9%。63億トンがごみになった。プラごみ対策の現状を追った。
【図・写真】リサイクルセンターに集められたプラスチックのごみ(7月、バンコク近郊)=小高顕撮影

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする