景気、好調持続に陰りも、日銀9月短観、貿易戦争で慎重、設備投資の意欲は衰えず。

堅調に推移する景気の持続力に陰りが生じている。日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、すべての企業をあわせた業況判断指数(DI)の先行きが3ポイント下がった。足元の景況感は高い水準にあるものの、機械や自動車などの企業は貿易戦争を不安視している。長引く原料高も逆風だが、足元の円安が景況感を前向きにする可能性はある。
全規模全産業の足元のDIは前回の6月調査から1ポイント下がり、2期連続の小幅な悪化だった。水準は2017年3月並みの高さで、バブルが崩壊した直後にあたる90年代前半の水準を保っている。
しかし3カ月先を示す先行きDIは全規模でみると全産業、製造業、非製造いずれも2~3ポイントの悪化を見込む。日銀は「貿易戦争は足元の判断にはあまり響いていないが、先行きに慎重な見方が増えている」(幹部)と分析する。
米国と中国がお互いに追加関税を課す動きは着地点が見えない。大企業製造業の先行きDIをみると、化学が11ポイント、はん用機械が9ポイント、生産用機械が5ポイント、自動車が2ポイント、それぞれ9月より低下すると予想。ある自動車メーカー幹部は「即座に高関税を課されることはないが厳戒態勢は解いていない」と話す。
関税の引き上げが世界の機械や半導体の受注に変調を及ぼし始めたとの見方も出ている。日本工作機械工業会(東京・港)によると、8月の中国向け工作機械受注額は前年同月比37%減の189億円だった。前年割れは6カ月連続となり、中国が約3割を占める外需(輸出額)も21カ月ぶりのマイナスに転じた。
景気鈍化のもう一つの要因は原油高だ。
日本企業への影響が大きい中東産ドバイ原油は足元で1バレル80ドル台と、約4年ぶりの高い水準にある。今年1月に比べると約15ドル上昇した。化学業界は「足元の好況が一気に冷え込む可能性がある」と注視する。
エネルギー価格も加えた8月の消費者物価指数(総合)は前年同月比1・3%の上昇と、5カ月ぶりに1%を超えた。消費者の実質所得を押し下げ、財布のヒモが固くなる恐れがある。8月から9月にかけて多発した自然災害も消費にはマイナスに効いている。
一方で企業の設備投資への意欲は衰えていない。9月の日銀短観によると大企業は2018年度の設備投資額を13・4%増やす計画だ。
強気の背景には、国内外ともに堅調な需要がある。需給の引き締まり具合を示す需給判断指数(DI)は大企業製造業の国内製商品・サービスでプラス1と、前回の6月調査から3ポイント改善した。1990年以来、約28年ぶりの高い水準にある。
各社は省力化投資を増やす。三菱電機は18年度の設備投資を増額する。需要が旺盛な産業機械や産業用ロボットの制御に使うファクトリーオートメーション(FA)機器を増産するとみられる。
円相場も今後、設備投資にプラスに働く可能性がある。1日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=114円台まで下がり、17年11月以来、11カ月ぶりの安値を付けた。日銀短観では大企業製造業の18年度の想定レートは107円40銭だ。
対ドルで1円の円安は主要企業の経常利益を0・5%程度押し上げるとされる。

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