米中摩擦と日本の得失(大機小機)

米中摩擦の激化が世界に深刻な影を落としている。生産や供給、消費で世界各国の相互依存が強まっている現在である。衝撃は、かねて不安要因となってきた英国の欧州連合(EU)離脱をはるかにしのぐ。
日本もそのあおりを受けるといわれる。確かに厳しいことは間違いないが、ここではちょっと冷静に影響と対策を考えてみたい。
民間シンクタンクのシミュレーションによると、米国の追加関税による日本への悪影響は意外に小さい。直接的なマイナスは国内総生産(GDP)比でほぼゼロだという。これに対して、米中経済への下押し効果はそれぞれ0・2~0・3ポイントにのぼりそうだ。
尖閣問題に懲りた日本企業の多くは、生産拠点を中国から東南アジアなどに着実に移転させつつある。つまり、中国リスクのヘッジはかなり進んでいる。
米中摩擦の中で、中国とはどう向き合うべきなのか。日中交流の歴史を冷静に振り返ることで、ヒントがみえてくる。
戦後の日中経済交流は通常、中国の改革開放後の40年間が強調される。だが、これに先立つ30年間にも友好貿易やLT貿易と称されるような交流が存在した。合わせて70年間を通じた大きな特徴は次の2つだ。
ひとつは、日中経済が日米関係と米中関係のバランスに翻弄されてきたことだ。典型が1971年7月の第1次ニクソン・ショックだ。日本の頭越しといわれた米中首脳会談の別称である。現在の米中摩擦や日中友好40年の動きにも、既視感がある。
もうひとつは、中国が一貫して政経一致の旗を降ろさないことだ。政経分離を基軸に中国と向き合おうとする日本との溝は深い。台湾問題や領土問題は、中国にとって経済と切り離せない政治問題であり続ける。
以上を踏まえると、昨今の米中摩擦は日本にとって必ずしもマイナスではなく、地球儀を俯瞰(ふかん)するような視点でみれば、より堅固な経済外交を展開できるチャンスと考えるべきだという結論に達する。
中国は政治状況次第で、合弁の棚上げや資産の接収すらいとわない国だ。政治リスクは引き続き高いので、日中経済関係も身軽に撤退できるようなプロジェクトに重点を置くべきだろう。残念だが、それが現実だと思う。(鵠洋)

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