廃プラ根絶物語(2)海で広がる「悪意なき汚染」(迫真)

 9月18日午前2時、底引き網漁師、西谷明(67)が瀬戸内海の漁場から高松市の漁港に戻ってきた。魚とともに護岸に上げたのはペットボトルなど約40キロのゴミだ。
西谷が狙うのはタコ、カレイだが、船の上に巻き上げた網の中は、ペットボトル、ストロー、プラスチック容器の方が目立つ。「魚の中にゴミが混ざるんじゃなくて、ゴミの中に魚が混ざっている」。西谷は近ごろの漁をこう表現する。
2016年1月のダボス会議で「海洋のプラスチックゴミは50年までに魚の量をしのぐ」とする報告書が発表された。この「予言」は随分と早く日本の海で的中しつつある。
7月18日、東京海洋大准教授の内田圭一は海洋ゴミの調査船に乗り込んだ。14年度から日本近海を調査している内田は「海底のゴミは多いところで1平方キロメートルあたり100キロ超。レジ袋は日本海だけで3500万枚が漂流している」と推計。マイクロプラスチックの密度は1平方キロメートルあたり172万個と、世界平均の27倍だという。
沖縄美ら海水族館などを運営する沖縄美ら島財団の真壁正江(49)のもとに9月16日、1頭のウミガメがやってきた。5キロの子供のウミガメ。弱って海岸に打ち上げられていたところを保護された。「ゴミを食べていなければいいんですが」。しかし、カメは3日後に死んだ。
真っ赤にただれ、傷ついた消化器官。プラゴミを飲み込んで排せつした痕跡だ。財団は昨年度だけで死んだウミガメを45頭確認している。コンピューター断層撮影装置(CT)で見ると死骸の胃袋はレジ袋などでぱんぱん。「かなりの確率で体内からプラゴミが見つかる」
海の環境保全に取り組む非政府組織(NGO)「JEAN」の事務局長、小島あずさ(60)は手元にある1枚の写真に視線を落とす。レジ袋をのどに詰まらせたまま絶命しているウミガメが映っていた。
ボランティア団体などと連携し、全国の海岸でゴミ回収に取り組む小島。9月25日も福岡市の団体から「食品包装が347、レジ袋が65、ペットボトル70」など清掃で見つかったゴミの詳細が届いた。「問題の難しさは海洋ごみが意図的に投棄されているわけではないことです」
風で舞ったレジ袋やゴミ箱からあふれ出たペットボトルが川や水路に落ちて海へ流れ着く。消費生活が生み出す悪意なき汚染が静かに深く広がっていた。

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